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親指の付け根に痛みを感じながらも、「どうやって固定すればいいのかわからない」「サポーターをつけたまま家事をしていいの?」と迷っていませんか。そんな疑問を抱えている方がとても多いのですが、実は固定の方法や使うタイミングを間違えると、かえって症状が長引いてしまうことがあります。
この記事では、母指CM関節症で悩まれている方に向けて、就寝時・家事中それぞれの場面での親指の守り方と、関節保護の考え方をわかりやすくお伝えします。


テーピングやサポーターをうまく活用できずに痛みを長引かせているケースを、臨床の現場でよく目にします。「固定さえしていれば大丈夫」という思い込みが、回復の妨げになっていることも少なくありません。正しい知識を身につけることが、まず第一歩です
親指の付け根にある「CM関節(手根中手関節)」に変形や炎症が起きる状態を、母指CM関節症といいます。この関節は手首と親指の間に位置していて、物をつまむ・握る・開けるといった日常動作のほとんどに関わっています。だからこそ、一度痛みが出ると生活のあらゆる場面で支障をきたしやすいのです。
発症しやすいのは40〜60代の女性で、更年期以降にホルモンバランスが変化することで靭帯が緩みやすくなり、関節が不安定になることが大きな原因のひとつとされています。男性に比べて女性に10倍近く多いとも言われており、決して珍しい症状ではありません。
「ペットボトルのキャップが開けられなくなった」「お鍋を持つとズキッとする」「朝起きたとき親指がぎこちなく動く」。こうした経験に心当たりがある方は、すでに関節への負担が積み重なっているサインかもしれません。
日常のちょっとした動作の中で、CM関節には体重の約10倍ともいわれる負荷がかかることがわかっています。気づかないうちに酷使を続けていると、軟骨がすり減り、関節の変形が進んでしまいます。
固定やサポーターには大きく分けて「痛みを和らげるための固定」と「進行を防ぐための関節保護」という二つの目的があります。この違いを理解しているかどうかで、使い方の判断がまったく変わってきます。
大切なのは、固定で「安静にする時間」と「動いて筋力を維持する時間」のバランスをとることです。固定しっぱなしにすることで親指周りの筋力が落ち、関節がますます不安定になるという悪循環に入ってしまう方を、私はこれまで何人も見てきました。
サポーターをつけていれば何をしても大丈夫、と思っていませんか。実はこれが落とし穴です。固定具は関節を守る道具ではありますが、それに頼りすぎると筋肉が正しく使われなくなり、関節の安定性がさらに低下していきます。
また、市販のサポーターを痛みがある時もない時も1日中つけ続けることで、皮膚への摩擦やうっ血が起こるケースもあります。使用する場面と時間をきちんと決めることが、固定を正しく活用するためのポイントです。
夜寝ているあいだの固定について、多くの方が「本当に必要なの?」と疑問を持たれます。結論から言うと、症状の段階によっては夜間の固定はとても有効です。ただし、やみくもにきつく固定すれば良いというわけではありません。
就寝中は意識なく手を握ったり、布団の重みで親指が変な方向に曲がったりすることがあります。それが痛みの原因になっている方も少なくありません。夜間に関節を中間位(自然な位置)で保持してあげることで、炎症が鎮まりやすくなり、朝起きたときのこわばりが軽くなります。
夜間固定で選ぶべきサポーターの条件は、次の通りです。
整形外科で処方してもらえる「サムスパイカスプリント」は、夜間固定に適した装具のひとつです。市販のものと違い、個人の手に合わせて形を調整できるため、固定力と快適性のバランスが取りやすいという特長があります。
固定具をつける前に、温めたタオルなどで親指の付け根を2〜3分温めると血流が改善し、固定中の不快感が減ります。逆に炎症が強いとき(腫れ・熱感がある日)は、冷やしてから固定するほうが症状を悪化させにくいです。朝外したあとは、ゆっくりと親指を動かして可動域を確認することも大切です。
「家事をやめるわけにはいかない」という声は、来院される方から本当によく聞きます。料理・洗濯・掃除、それぞれの場面で親指にかかる負担はじつにさまざまです。ここでは場面別に、具体的な工夫の考え方をお伝えします。
調理中に最も負担がかかるのは「ものをつかむ」「ひねる」「押さえる」動作です。特に瓶のふたを開けるとき、包丁の柄を強く握るとき、食材を絞るときなどに痛みが走る方が多いです。
工夫として有効なのは、グリップの太い調理器具に切り替えること、オープナーやシリコンゴムなどの補助道具を積極的に使うことです。親指に力を集中させない動作の工夫が、日々の負担をじわじわと減らしていきます。
洗濯物を絞る動作、雑巾がけ、掃除機のグリップを握り続ける動作も要注意です。これらは「持続的な把持力(握る力)」をずっと要求するので、CM関節に長時間の負荷をかけてしまいます。
洗濯はすすぎを柔軟剤で短縮する、絞りはなるべく脱水機に任せる、掃除機はグリップにタオルを巻いて太めにする、といった生活の知恵が痛みの軽減につながります。完璧にこなそうとせず、道具に任せる部分を増やしてみてください。
家事中のサポーターは、就寝時とは目的が異なります。就寝時は「安静固定」が目的ですが、家事中は「動きながら関節を守ること」が目的です。そのため、家事中は固定力よりも「動きやすさ」と「保護力」のバランスを優先して選ぶ必要があります。
| 使用シーン | 求められる機能 | サポーターの種類 |
|---|---|---|
| 就寝時 | 関節を安定した位置で固定・保持 | サムスパイカスプリント・硬めの夜間用 |
| 家事・軽作業 | 動かしながら保護・痛みを軽減 | 軽量メッシュ素材・サムホール付き薄型 |
| 屋外・外出時 | 目立たず着用でき関節を支える | スキン系カラーの薄型サポーター |
サポーターで痛みが少し楽になると、「これで大丈夫」と思いがちです。でも、サポーターはあくまで補助具であって、それだけで母指CM関節症が根本から改善するわけではありません。関節が不安定になった背景、つまり靭帯の緩み・筋力バランスの崩れ・身体全体の動きの偏りに目を向けることが、再発を防ぐ上で欠かせないのです。
たとえば、親指だけに注目していると気づきにくいのですが、手首や肘、肩甲骨の動きが制限されていることで、余計な負担が親指の付け根に集中してしまっているケースがあります。腱鞘炎と母指CM関節症が同時に起きている方も少なくなく、その場合は一方だけを対処しても片手落ちになります。
当院では、親指だけを見るのではなく、身体全体の検査からアプローチします。足底重心測定器(ピドスコープ)をはじめとした5種類の検査で原因を可視化し、なぜ親指の付け根に負担が集中しているのかを明らかにします。
その上で、骨格の調整・筋力バランスの修正・日常動作の見直しを組み合わせて施術計画を立てていきます。「固定してもなかなか良くならない」という方ほど、全身のバランスを整えることで変化が起きやすいです。
場面によって使い分けるのがベストです。テーピングは細かい動きへの対応力が高く、スポーツや細かい作業に向いています。サポーターは着脱が簡単で、就寝時や家事中など長時間の使用に向いています。どちらが自分に合っているかは、症状の強さや生活スタイルによって変わりますので、一度専門家に相談されることをおすすめします。
軽度の場合は安静と固定で症状が落ち着くことがあります。ただし、変形が進んでいる場合や痛みが長期間続いている場合は、固定だけでの改善は難しいです。「様子を見ていたら悪化した」という方も多いので、早めに専門家のアドバイスを受けることが大切です。
両方を上手に使い分けることが理想的です。画像検査や薬の処方が必要な場合は整形外科へ。身体のバランスを整え、日常生活での動作を改善していきたい場合は整体院が力を発揮できます。当院では整形外科での診断内容も踏まえた上でのアドバイスが可能ですので、お気軽にご相談ください。
母指CM関節症は、適切なケアと関節保護を続けることで、多くの方が日常生活を快適に送れるようになります。ただ、「正しい固定の仕方がわからない」「どこに相談すれば良いかわからない」という状態のまま時間が経つと、関節の変形が進んで手術を余儀なくされるケースもあります。
治療家として30年以上、数多くの手や指の痛みに悩む方と向き合ってきた立場から言えることは、「早く原因を突き止めて、的確なアプローチをすれば、多くの方が改善できる」ということです。固定や関節保護は重要ですが、それはあくまで症状を悪化させないための手段であって、根本的な解決ではありません。身体全体のバランスを見ながら、あなた一人ひとりに合ったアプローチで一緒に取り組んでいきましょう。どうか一人で抱え込まず、気軽に声をかけてください。

