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親指の付け根が痛くて、「年のせいかな」「そのうち治るだろう」とそのままにしていませんか?実は、母指CM関節症は放置するほどに症状が深刻になっていく疾患です。日常のちょっとした動作で感じる違和感が、やがて手術が必要なほどの変形へと発展することもあります。今回は、親指の付け根の痛みがこれからどう変化していくのか、そして悪化を防ぐためにいま何をすべきかをていねいにお伝えします。


院長の吉原です。「少し痛いだけだから大丈夫」と来院を先延ばしにした結果、手術を勧められてから来院される患者さんを何人も診てきました。早めに動いてほしいという気持ちで、この記事を書きました
親指の付け根にある関節は、物をつまむ、握る、ページをめくる、スマートフォンを操作するなど、一日に何百回もの動作に関わっています。それだけ酷使されている場所だからこそ、傷みが出ても「使いすぎかな」と見過ごしてしまうことが多いのです。
しかし、軟骨はいちど損傷すると自然に再生されることはありません。初期のうちに適切なケアをしなければ、すり減りはじわじわと進んでいきます。気づいたときには元に戻せない段階まで進行していた、というケースは決して珍しくないのです。
「痛みに慣れてきた」と感じるのも要注意のサインです。慢性化した痛みは感覚が麻痺しているだけで、関節のダメージが消えたわけではありません。むしろ悪化しているサインである可能性のほうが高いのです。
母指CM関節症には、国際的な分類として「ステージⅠからⅣ」という4段階の進行指標があります。このステージを理解しておくことが、いまどの段階にいるかを知るうえでとても役立ちます。
最初の段階では、レントゲン上にはっきりとした異常は映らないことがほとんどです。ただし、関節を支えるじん帯が緩み始め、親指の付け根が「なんとなくぐらつく」「力を入れると痛い」という感覚が出てきます。この段階では、日常的な動作で若干の違和感を覚える程度で、「疲れているだけかも」と思ってしまいがちです。
ステージⅡになると、レントゲンで関節のすき間が狭くなっていることが確認できるようになります。この頃から、物をつまんだり握ったりする動作での痛みが強まり、関節のまわりが腫れたり、熱っぽく感じたりすることも出てきます。スーパーのレジ袋を持ったり、調理中に食材をつかんだりといった何気ない動作が、だんだんつらくなってきます。
ステージⅢに入ると、親指の付け根が「くの字」に曲がる変形が現れてきます。関節の安定性が大きく失われるため、握力やつまみ力が著しく低下し、ペットボトルのキャップや瓶のフタがほとんど開けられなくなります。腫れや熱感も強くなり、炎症が慢性化してくることも多いです。
最終段階のステージⅣでは、母指CM関節だけでなく、その周辺の手根骨にまで変性が広がります。変形と不安定性はさらに深刻になり、物をつまむ・握るといった基本的な動作が大きく制限されます。ここまで進行すると、手術を検討せざるを得ないケースが多くなります。術後も完全に機能が戻らないことがある点は、あらかじめ理解しておく必要があります。
進行ステージごとの変化を見てきましたが、実際の生活でどんな影響が出てくるのかを、もう少し具体的にお伝えします。
症状が進行していくと、親指の第1関節が異常に曲がり、第2関節が過度に反り返る「スワンネック変形」と呼ばれる状態になることがあります。この状態になると、指の見た目が大きく変わるだけでなく、つまみ動作がほぼ不可能になります。「指がこんな形になってしまった」という外見上の変化は、患者さんにとって精神的なダメージも大きいものです。
関節を支えるじん帯がゆるみ、軟骨がなくなると、関節が本来の位置からずれてしまう「亜脱臼」が起こることもあります。親指の付け根が出っ張って見えたり、触れると骨が動くような感覚があったりします。この状態になると、保存療法だけでの改善が難しくなってくることも多いです。
痛い手をかばうことで、もう一方の手への負担が増します。それにより、もともと症状がなかった側にも同様の変化が起きてくることがあります。片手をかばう生活が長くなるほど、全身のバランスにも影響が出てきます。
日常生活の中で「手の力」は想像以上にあらゆる場面で使われています。以下のような動作が困難になってきます。
これらのひとつひとつが「できなくなる」ことで、生活の質が大きく下がっていきます。「家事ができなくなるほどつらい」という訴えは、当院に来られる患者さんからもよく聞かれます。
ここまで読んで、怖くなってしまった方もいるかもしれません。でも、この記事でお伝えしたいのは「怖がってほしい」ということではありません。「早めに動けば、まだ十分に手術なしで改善できる可能性がある」ということです。
ステージⅠやⅡの段階であれば、関節への負担を減らしながら適切なアプローチをすることで、症状の進行を止め、日常生活の支障を取り除いていくことができます。逆に言えば、悪化してからでは選べる方法が限られてきます。「もっと早く来ればよかった」という声を、臨床の現場で何度も聞いてきました。
整体は「軟骨を再生させる」ものではありません。ただ、関節への負担を減らすために、手・指・手首だけでなく、腕・肩・体幹といった全身のバランスを整えることはできます。
親指に過剰な負担がかかる原因は、親指単体にあるわけではないことがほとんどです。肩や肘の動きが制限されていることで、手首や指で動作を補っているケースもあります。全身を見渡して原因を特定することが、当院の治療の出発点です。
親指付け根の痛みに悩んでいる方の中には、母指CM関節症と並んで腱鞘炎を合併しているケースも少なくありません。腱鞘炎は腱を包むトンネル(腱鞘)に炎症が起きる状態で、症状の出方や場所が似ているため、誤解されることもあります。どちらが原因なのか、あるいは両方が絡み合っているのかを正確に見分けることが、適切なアプローチには欠かせません。
開院以来30年以上、多くの手・指の症状を診てきた経験から言えることがあります。それは、「痛みの場所=原因の場所ではない」ということです。
足底重心測定器をはじめとした独自の検査で、どこにどう負担がかかっているのかを可視化することで、はじめて的確なアプローチができます。検査もせずに痛い場所をただもみほぐすだけでは、その場しのぎにしかなりません。何度繰り返しても同じ症状が戻ってくるのは、根本の原因に触れていないからです。
病院でレントゲンを撮って「変形がありますね、様子を見ましょう」と言われるだけでは、前に進んでいきません。原因を特定して、計画を立てて、段階的に改善していくこと。それが当院の整体が、手術を回避したい方に選ばれている理由です。
受診するまでの間や、通院と並行して自分でできることもあります。知っておいて損はないので、ご参考にしてください。
ペットボトルや瓶は専用のオープナーを使う、包丁は軽量タイプに変える、スマートフォン操作は人差し指でするといった小さな工夫が積み重なることで、日々の負担を減らすことができます。「たったそれだけ?」と思うかもしれませんが、何百回もの反復動作で加わる小さな力が積み重なって症状を悪化させているため、こうした積み重ねは意外と大切なのです。
親指の付け根を固定するサポーターは、関節のぐらつきを抑えるうえで一定の効果があります。ただし、サポーターはあくまで補助であり、根本的な解決にはなりません。また、長期間の固定により周辺の筋力が低下することもあるため、使い方に注意が必要です。
炎症が強いときは、患部を安静にしてあげることが大切です。「少し痛いくらい大丈夫」と我慢しながら家事や仕事を続けることが、症状をさらに悪化させている大きな原因になっていることがあります。
母指CM関節症は、特定の生活習慣やライフステージにある方に多くみられます。次のような方は、早めに状態を確認されることをおすすめします。
これらに当てはまる方は、いまはまだ軽い痛みでも、将来的に症状が進みやすい素因を持っている可能性があります。「まだ大丈夫」という段階だからこそ、今から対策を始めることが重要です。
今回お伝えしてきたことをひとことで言えば、「放置している時間が長くなるほど、取り返しのつかない段階に近づいていく」ということです。痛みに慣れてしまっていること、忙しくて病院や整体に行けていないこと、「大げさにしたくない」という遠慮。そういった事情があることは、十分わかります。
でも、私が30年の臨床経験の中で何度も見てきたのは、「もっと早く来ていれば」という後悔の言葉です。手術が必要になった方は、術後のリハビリに数ヶ月以上かかります。日常生活への復帰も、簡単ではありません。そうなる前に、できることがあるのです。
親指の違和感や痛みを感じているなら、一人で抱え込まないでください。「これくらいで相談していいのかな」と迷う必要は、まったくありません。どんな段階でも、できることは必ずあります。いつでも気軽に声をかけてもらえたら、一緒に考えていきます。

