
お気軽にご相談ください!


最近、親指の付け根あたりがなんとなく出っ張ってきたな、と感じることはありませんか。瓶のフタを開けるたびにズキッとする。タオルを絞ると痛みが走る。そんな経験が重なってきたとしたら、それはただの「疲れ」や「年のせい」ではないかもしれません。
今回は、母指CM関節症のなかでも特に気になる「親指の変形」に焦点を当てて、なぜ変形が起きるのか、どこまで進むのか、日常生活にどんな影響が出るのかを、できるだけわかりやすくお伝えしていきます。
整体院シェルパ・広島院院長の吉原和彦です。柔道整復師として30年以上、多くの方の手・指のお悩みに向き合ってきました。この記事が、今の状態を正しく理解するきっかけになれば嬉しいです。


「まだ大したことないから」と様子を見ているうちに、変形が固まってしまってから来院される方が少なくありません。早いうちに正しく知っておくことが、結果的に大きな差を生みます
そもそもなぜ、親指の付け根の形が変わってしまうのでしょうか。ここを理解しておくだけで、これからの対処の仕方がまったく変わってきます。親指の付け根には「CM関節(手根中手関節)」という関節があり、物をつまむ・握る・ひねるといった動作すべてに関わっています。この関節は非常によく動く反面、それだけ負担もかかりやすい場所です。
年齢を重ねるにつれて、この関節を守っている軟骨が少しずつすり減っていきます。軟骨が薄くなると骨どうしが直接ぶつかるようになり、炎症が起きやすくなります。その炎症が慢性化すると、関節の周囲に余分な骨が形成されたり、関節の位置がずれてきたりして、あの「出っ張り」が生まれるのです。
40代以降の女性に多くみられるのには、はっきりした理由があります。女性ホルモン(エストロゲン)には関節の軟骨や靭帯を保護する働きがあります。閉経前後にこのホルモンが減少すると、関節を守るクッションが失われやすくなり、CM関節にとって非常に厳しい環境になります。家事・育児・仕事で手を使い続けてきた女性の指に、変化が起きやすいのはそのためです。
変形の進み方には段階があります。初期のステージでは、痛みや腫れはあっても関節の見た目にはあまり変化がありません。ところが放置して炎症が繰り返されると、骨の並びが崩れ始め、親指の根元が外側に張り出すように変形してくるのがステージ2〜3の特徴です。さらに進むと、親指全体がZ字型に曲がってしまう「スワンネック変形」と呼ばれる状態になることもあります。
「変形が出てきた」と聞くと怖く感じるかもしれませんが、大事なのはそれが日常生活にどう影響してくるかを具体的に知ることです。実際に来院された方たちのお話をもとに、起きやすい変化をご紹介します。
最初は痛みを避けるために、無意識に親指をかばう動作が増えてきます。ペットボトルを開けるとき、ビンのフタをひねるとき、気づけば親指ではなく手のひら全体で力をかけるようになっている。これは体が自然に痛みを回避しようとしている反応です。ただ、この代償動作が続くと今度は手首や肘、さらには肩にまで負担が波及していくことがあります。
ボタンを留める、ペンを持つ、ハサミを使う。こうした細かい動作は、親指のつまみ力に大きく依存しています。変形が進んで関節が安定しなくなると、こうした動作のたびにぐらつくような感覚や鋭い痛みが出るようになります。料理が好きな方なら包丁やピーラーを使うのがつらくなる。ガーデニングが趣味の方なら剪定バサミが握れなくなる。そういった声をよくお聞きします。
変形が固定化してくると、親指と他の指がうまく向かい合えなくなります。つまむ力、いわゆる「つまみ力(ピンチ力)」が著しく低下します。重いものを運べない、タオルが絞れない、といった変化はこの段階で特に顕著になります。日常動作のほとんどが親指を起点にしているため、この機能の低下は生活全体の質に直結します。
来院される方のなかには「まだ動くから、ちょっと痛いだけだから」と数年間様子を見ていた方も多くいらっしゃいます。そのお気持ち、よくわかります。ただ、この症状には「痛みが落ち着いている間にも変形は少しずつ進んでいる」という特徴があります。
痛みが強い時期と穏やかな時期を繰り返しながら、徐々に関節の形が変わっていくのです。気づいたときには変形がかなり進んでいて、「もっと早く来ればよかった」とおっしゃる方が後を絶ちません。症状が軽いうちほど、選べる対処法の幅が広いのも事実です。
病院では装具療法・薬物療法・手術療法が一般的な選択肢として示されます。もちろんそれぞれに意味はあります。ただ、装具は装着のストレスがあり、痛み止めは根本原因を解消するものではありません。手術は術後のリハビリや生活制限も伴います。「できれば手術は避けたい」という方がとても多いのも当然だと思います。
当院にいらっしゃる方の多くが、複数の要因が重なって発症されています。加齢だけでなく、ホルモンの変化、手首や肘の使い方のクセ、姿勢のかたより、過去のケガの影響など、見逃されがちな原因が関わっていることも珍しくありません。だから、問診と検査をとても大切にしています。
当院では足底重心測定をはじめとした5種類の検査を組み合わせて、あなたの体で何が起きているかを多角的に把握します。原因がはっきりするから、次の一手が決まります。コンパスなしに山を登ることはできません。これは手の症状でも同じことです。
CM関節の変形は、関節を支える靭帯や周囲の筋肉の機能低下も大きく関係しています。痛みを取るだけでなく、関節を安定させるための筋機能を回復させることが、症状の再発を防ぐうえでとても重要です。当院では、西洋医学・東洋医学に運動学の視点を加えた独自の整体技術で、患者さん一人ひとりの状態に合わせた施術と運動指導を組み合わせて対応しています。
母指CM関節症と症状が似ていて、しばしば一緒に起きるのが腱鞘炎です。腱鞘炎は指や手首を動かす腱とそれを包む組織に炎症が起きる状態で、CM関節症と同様に手を多く使う女性に多く見られます。「親指の付け根の痛みに加えて手首にも引っかかるような感覚がある」という方は、両方の状態が絡み合っている可能性もあります。こうした複合的な状態こそ、検査で丁寧に見分けることが大切です。
専門的な施術と並行して、日常生活の中で意識できることもお伝えしておきます。症状の悪化を防ぐために、ぜひ参考にしてみてください。
ただ、セルフケアはあくまでも「悪化を防ぐ」ための補助的な手段です。変形が始まっているなら、早めに専門家に診てもらうことが何より大切です。
「年だから仕方ない」という言葉、私はあまり好きではありません。年齢は確かに関係しますが、だからといって変化を受け入れて我慢し続けなければいけない理由にはならないからです。変形が始まっていても、適切なアプローチで進行を遅らせ、痛みを和らげ、日常の動作を取り戻せる方はたくさんいらっしゃいます。
大切なのは、今の状態を正しく知ること。そして、一人で抱え込まないことです。「この程度で相談していいのかな」と遠慮される方も多いのですが、そんな必要はまったくありません。早ければ早いほど、できることの幅は広がります。
私自身、学生時代に股関節の痛みで悩み、原因がわからないまま治療を受け続けた経験があります。あのときの孤独感と不安は今でも忘れられません。だからこそ、同じように悩んでいる方に「一人じゃないですよ」と伝えたいのです。いつでも気軽に声をかけてください。一緒に原因を探して、前に進みましょう。

