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親指の付け根がズキッと痛む。ペットボトルのフタが開けられない。そんな日常のちょっとした動作のたびに痛みが走って、思わず「また…」とため息が出てしまう。そういう毎日を送っていませんか?
病院で処方された母指CM関節症の鎮痛薬を飲んでいるのに、なかなか楽にならない。それどころか「いつまで飲み続ければいいんだろう」と不安になってきた。そんなお悩みを抱えている方に、今日はぜひ読んでいただきたいことがあります。


通院しながら痛み止めを飲み続けているのに一向に改善しないという方が、当院にも多くいらっしゃいます。薬は決して悪いものではありませんが、なぜ効かないのか・なぜ痛みが繰り返されるのかを理解することが、本当の意味での改善への第一歩だと私は思っています
「病院でもらった薬をちゃんと飲んでいるのに、なかなか楽にならない」という声は、当院でもとてもよく耳にします。その背景には、鎮痛薬というものの性質を正しく理解していないことが関係していることがほとんどです。薬の役割を知ることで、自分の症状とどう向き合えばいいかが見えてきます。
まず大前提として知っておいていただきたいのは、鎮痛薬は「痛みそのものを治す薬ではない」ということです。整形外科で処方されるロキソプロフェン(ロキソニン)やジクロフェナク(ボルタレン)などの消炎鎮痛薬は、炎症を一時的に抑えて痛みを和らげることを目的としています。
つまり、熱が出たときに解熱剤を飲むようなもので、症状を一時的に楽にする効果はありますが、熱の原因そのものをなくすわけではありません。母指CM関節症でいえば、関節の軟骨がすり減っているという根本的な状態は、薬を飲んでいる間も変わっていないのです。
もうひとつ、通院しながら薬を飲み続けている方に知っておいてほしいことがあります。消炎鎮痛薬を長い期間にわたって服用すると、胃腸への負担が蓄積されることがあります。胃痛や胃もたれが出てきたり、胃薬と一緒に処方されているという方もいらっしゃると思います。
また、腎臓への影響や、長期使用による薬の効果の変化なども指摘されています。「痛みはつらいけど、胃も心配」という方も多く、そのジレンマが日々のストレスになっているケースも少なくありません。
そもそも母指CM関節症とは何か、改めて確認しておきましょう。親指の根元と手首のあいだにあるCM関節(手根中手関節)は、握る・つまむ・回すといった動作の要となる関節です。日常生活で最も酷使されているといっても過言ではありません。
この関節を覆っている軟骨が加齢や使いすぎによってすり減り、骨同士がぶつかるようになると、痛みや腫れが生じます。特に40代以降の女性に多く見られる理由には、ホルモンバランスの変化が大きく関係しています。
親指のCM関節に負担がかかりやすい動作には、次のようなものがあります。
日常のさりげない動作ばかりですよね。「たったこれだけのことが痛くてできない」という状況は、毎日の生活のストレスとして着実に積み重なっていきます。
女性ホルモン(エストロゲン)には、関節の靭帯や軟骨の組織を維持する働きがあるといわれています。閉経前後にエストロゲンの分泌が低下すると、関節周囲の組織が弱くなりやすく、CM関節への負担が増すと考えられています。「更年期のころから急に手が痛くなった」という方がいらっしゃるのは、こういった背景があるからです。
整形外科では、母指CM関節症に対して主に薬物療法・装具療法・注射療法、そして重症例では手術という段階的なアプローチが一般的です。それぞれに意味がありますが、なぜ多くの方が「通院してもなかなか良くならない」と感じるのでしょうか。
痛みを薬で抑える、サポーターで固定する。それ自体は間違いではありません。しかし、親指のCM関節に過剰な負担がかかり続けている「原因」が取り除かれない限り、症状はまた戻ってきます。
痛みが出ているのは結果であって、その背後に必ずある「なぜその関節に過剰な負担がかかっているのか」という問いに答えなければ、本当の意味での改善とは言えないのです。
私が30年の臨床経験を通じて感じていることのひとつに、「手の症状なのに、身体全体のバランスが崩れているケースが非常に多い」というものがあります。
たとえば、肩の動きが制限されていると腕全体の使い方が変わり、手首や指への負担が増します。猫背気味の姿勢や巻き肩が続いていると、前腕の筋肉が慢性的に緊張し、親指まわりの筋肉にも影響が及びます。母指CM関節症は「手だけの問題」ではなく、全身のバランスが関与している症状であるという視点が、病院の治療では抜け落ちていることが多いのです。
当院では、母指CM関節症の方が来院された場合、まず徹底した問診と多角的な検査を行います。痛みの部位だけを診るのではなく、姿勢・重心・肩や肘の可動域・前腕の筋肉の状態など、全身を検査したうえで「この方の親指に負担がかかり続けている原因はどこにあるのか」を明らかにします。
原因がわかるから、対策が立てられます。コンパスを持たずに山に登ることなど誰もしませんよね。原因がわからないまま施術を続けることは、それと同じです。
痛みがつらいときに鎮痛薬を使うことを否定するつもりはまったくありません。うまく活用することで日常生活の質を守ることができますし、炎症が強い時期には適切な使用が大切です。
ただ、目標は「薬を飲み続けなくても日常生活が送れる状態」にあると思っています。そのためには、なぜ関節に負担がかかっているのかを解明し、手の使い方・姿勢・筋肉のバランスを整えていくことが不可欠です。
サポーターは、痛みがある時期に関節を保護する意味で有効です。ただし、長期間つけっぱなしにすると周囲の筋肉が使われなくなり、かえって関節が弱くなる可能性があります。湿布も同様で、局所の炎症を抑える一時的なケアとしては意味がありますが、根本的な解決策にはなりません。
「サポーターと湿布と薬を組み合わせているけど、やっぱり痛い」という状態が続いているなら、そこには必ず見落とされている原因があります。
来院前や通院中でも、ご自身でできることをお伝えしておきます。もちろん症状の程度によって異なりますので、あくまでも一般的な考え方として参考にしてください。
「無意識に親指を使いすぎている」という方がほとんどです。たとえばスマートフォン操作は人差し指を積極的に使う、ペットボトルは両手で開ける、タオルを絞る際は手のひら全体を使うなど、小さな工夫の積み重ねが関節への負担軽減につながります。
親指の動きに関わる筋肉の多くは前腕にあります。手首を反らせた状態で反対の手でゆっくり引っ張るストレッチや、前腕を軽くほぐすことで親指まわりの緊張が和らぐことがあります。ただし、急性期(炎症が強い時期)には無理に動かさないことが原則です。
猫背や巻き肩を日常的に続けていると、前腕から手先にかけての筋緊張が高まりやすくなります。デスクワークやスマートフォンの使用時に「肩が前に出ていないか」「肘が不自然な角度になっていないか」を意識するだけでも、長期的な負担の軽減につながります。
手の痛みで多い症状として、腱鞘炎があります。母指CM関節症と腱鞘炎(特にドケルバン腱鞘炎)は、どちらも親指まわりに痛みが出るため混同されやすいのですが、痛みの場所や原因が異なります。
| 母指CM関節症 | ドケルバン腱鞘炎 | |
|---|---|---|
| 主な痛みの場所 | 親指の付け根(CM関節部) | 手首の親指側(橈骨茎状突起付近) |
| 原因 | 関節軟骨の摩耗 | 腱と腱鞘の摩擦・炎症 |
| 好発年代 | 40代以降の女性 | 30〜50代の女性・産後の女性 |
| 特徴的な動作痛 | つまむ・回す動作 | 親指を曲げて握る動作(フィンケルシュタインテスト陽性) |
両方が同時に起こっているケースもあります。「どちらかよくわからない」という場合も、きちんと検査で鑑別することが大切です。
通院しながら鎮痛薬を飲んでいるのに改善しない、あるいは「ずっと飲み続けるしかないの?」という不安を感じているなら、ぜひ一度立ち止まって考えてみてください。薬は痛みを一時的に和らげてくれますが、親指のCM関節に負担をかけ続けている根本の原因を解消しなければ、症状は繰り返します。
私が大切にしているのは、「なぜその人の親指が痛くなったのか」をきちんと明らかにすることです。原因がわかれば、対策は必ず見えてきます。「もう手術しかないの?」「薬をやめたら絶対に悪化する?」そんなふうに一人で抱え込まないでください。どうかお気軽にご相談ください。あなたの親指の悩み、一緒に解決しましょう。

