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脊柱管狭窄症で悩まれている方からよく聞く悩みの一つが、「座っている時間が長いと症状が悪化する」「同じ姿勢で座っていられない」というお話です。実は、脊柱管狭窄症の症状を大きく左右するのが、日常生活での座る姿勢なのです。長年臨床経験を積んできた中で感じるのは、正しい座り方を学ぶだけで、症状が著しく改善される方が本当に多くいるということです。


30年以上の臨床経験から、多くの脊柱管狭窄症の患者さんが座り方一つで症状が変わることを知っています。今回は、日常生活で実践できる座り方の工夫をお伝えしていきます
脊柱管狭窄症というのは、背骨の中を通る神経のトンネル(脊柱管)が何らかの理由で狭くなり、神経を圧迫することで腰やお尻、足にしびれや痛みが出る症状です。特に60代以降の方に多く見られますが、年々患者数は増えています。ここで重要なポイントなのですが、脊柱管狭窄症の症状の出方は、姿勢や動作によって大きく変わるということをご存知でしょうか。
実は、背骨を後ろに反らすような姿勢になると、脊柱管はさらに狭くなってしまいます。逆に、少し前かがみになるような姿勢だと、脊柱管が広がり、神経への圧迫が軽くなるのです。つまり、日頃からどのような姿勢で座っているかによって、症状が楽になったり、悪化したりするということなのです。
では、どのような座り方が脊柱管狭窄症を悪化させやすいのかを見ていきましょう。当院に来院される患者さんの中でも、無意識のうちにやっている悪い座り方が見られます。心当たりがないか、確認してみてください。
腰が反った状態で座り続けると、脊柱管が圧迫されやすくなります。特に仕事中にデスクに向かって、気づかないうちに腰を反らせている方が多いです。長時間この姿勢が続くと、夕方には足のしびれや重だるさが強くなる傾向があります。オフィスチェアに浅く座り、背もたれに寄りかかりながら腰を反らせている状態が最も危険です。
一見すると前かがみで脊柱管が広がっているように思えますが、度が過ぎた猫背は別です。胸を丸めすぎて背中全体が丸まり、さらに腰だけが前に出ているような不自然な座り方をしている方を見かけます。この状態では実は脊柱管狭窄症の悪化につながることもあり、同時に腹筋の機能も低下してしまいます。
自宅でくつろぐ時間に、ついつい柔らかいソファーに深く沈み込んでいないでしょうか。このような座り方は、腰椎(腰の骨)が不自然な角度になり、脊柱管への負担が増してしまいます。リラックスしているつもりが、実は症状を悪化させている可能性が高いのです。
では、どのように座れば脊柱管狭窄症の症状を軽くできるのでしょうか。ここからは、実践的な座り方のコツをお伝えします。
最も重要なのが、骨盤をしっかり立てた状態で座ることです。骨盤が立つとは、具体的にどのような状態かというと、座った時に坐骨(お尻の一番下の骨)が椅子にしっかり接地し、その上に背骨がすっと立った状態をいいます。鏡の横に座って確認してみると、耳、肩、骨盤が一直線に並んでいるのが理想的です。この状態であれば、脊柱管への圧迫が最小限に抑えられます。
骨盤を立てた状態をキープするには、腹筋の力が不可欠です。お腹に軽く力を入れるイメージで、上半身がやや前に傾くようにしましょう。これは決して無理に前かがみになることではなく、15度程度の自然な前傾姿勢です。この角度が、脊柱管狭窄症の方にとって最も圧迫感が少ない座位となります。
長時間座り続ける環境にいる方は、クッションの活用が効果的です。腰と椅子の間に厚さ5~8センチ程度のクッションを挟むことで、腰椎の自然なカーブを保ちやすくなります。特に仕事中は、別売りの腰用クッションを用意することをお勧めします。ただし、クッションが厚すぎるとかえって腰が反ってしまうので注意してください。
座り方の知識があっても、実生活で実行できなければ意味がありません。ここからは、すぐに取り入れられる工夫をご紹介します。
30分以上同じ姿勢で座り続けることは避けましょう。デスクワークが多い方であれば、30分ごとに立ち上がり、腰を軽く後ろに反らす軽いストレッチをするだけで、脊柱管狭窄症の症状が出にくくなります。短時間でも立つことで、腰周辺の筋肉の緊張がほぐれます。
椅子の高さが低すぎると、骨盤が後ろに傾き、脊柱管が圧迫されやすくなります。逆に高すぎると、足が浮き、下半身が不安定になります。理想的な椅子の高さは、足がしっかり床に着き、膝と股関節がそれぞれ90度になる高さです。オフィス環境であれば、椅子の高さ調整ができるものを選ぶことが大切です。
リビングソファーやダイニングチェアなど、自宅での座る環境もとても重要です。ついつい柔らかいソファーに身を任せたくなりますが、脊柱管狭窄症がある方は、適度な硬さのある椅子を選ぶことをお勧めします。また、座る時間が長くなりがちな食事の時間は、背もたれのある直立した椅子を使うと、自然と骨盤が立った姿勢になります。
現代では、多くの方が日中にスマートフォンやパソコンを使用しています。画面を見下ろす時の首の角度が悪いと、首から腰まで全体的な姿勢が崩れ、脊柱管狭窄症の症状を招きます。画面は目の高さと同じか、やや上に置き、下を向きすぎないようにしましょう。
自宅だけでなく、外出時の座り方も症状に大きく影響します。特に電車やバス、車での移動が多い方は注意が必要です。
電車やバスの座席は、デザイン優先で腰のサポートがないものがほとんどです。こうした環境では、自分で意識的に骨盤を立て、腹筋に力を入れる必要があります。タオルやポーチなどを腰と座席の間に挟んで、クッションの代わりにするのも有効です。
車の運転は、脊柱管狭窄症を悪化させやすい動作の筆頭です。ハンドルを握る姿勢が猫背になりやすく、同時に足でペダルを操作することで、腰椎に大きな負担がかかります。シートクッションを用意し、2~3時間ごとに休憩を取ることが重要です。また、ハンドル位置が低すぎないか確認し、やや前傾で腹筋を使った姿勢を心がけてください。
脊柱管狭窄症の症状の現れ方は、患者さんによって異なります。現在の症状段階に応じた座り方を意識することで、さらに効果が高まります。
足のしびれが強く出ている時期は、脊柱管への神経圧迫が進行している可能性があります。この時期は、通常の座り方よりもさらに前傾姿勢を強くし、脊柱管を広げることを優先しましょう。また、立っている時間と座っている時間のバランスを、より立つ時間を多くする方向にシフトさせるのも効果的です。
腰の重だるさが主な症状であれば、骨盤を立てた標準的な座り方で対応できます。この段階で正しい座り方を習慣化できれば、さらなる症状の悪化を防ぐことができます。
ここまで座り方の工夫についてお伝えしてきましたが、重要なポイントがもう一つあります。実は、30年以上の臨床経験の中で感じるのは、脊柱管狭窄症は座り方だけを改善しても、根本的な解決にはならないということです。
なぜなら、脊柱管狭窄症を引き起こしている根本原因は、複数の要因が絡み合っているためです。例えば、股関節の柔軟性の低下、腹筋と背筋のアンバランス、歩き方の悪さ、足指が使えていないこと、など、様々な要因があります。座り方という表面的な改善だけでなく、これらの根本原因に対してアプローチしなければ、いつまでも症状に振り回されることになります。
当院では、多角的な検査によってあなたの脊柱管狭窄症の原因を特定し、座り方の改善はもとより、骨格や筋肉のバランスを整え、姿勢や歩行まで改善する治療を行っています。座り方を工夫しても症状が改善しない場合は、根本原因に対する治療が必要な段階である可能性が高いです。
正しい座り方を意識し、それを習慣化できた患者さんからは、以下のような声をいただいています。「长時間座っていても、以前ほど足のしびれが出なくなった」「仕事中の腰の重だるさが軽くなり、集中力が戻った」「外出先での移動が楽になり、趣味の活動を再開できた」など、生活の質が大きく改善される傾向があります。
ただし、座り方の改善効果を感じるまでには、個人差があります。毎日継続して正しい座り方を心がけることで、数週間から数ヶ月の間に変化が現れることが多いです。焦らず、長期的な視点で取り組むことが成功のポイントです。
脊柱管狭窄症で悩まれている方にとって、座り方の改善は非常に有効な手段です。今回お伝えした骨盤を立てる、腹筋を意識する、定期的に立ち上がるなどの工夫は、すべて自分で実践できるものばかりです。ただし、症状が強い場合や、座り方改善だけでは十分な効果が得られない場合は、専門家による診断と治療が必要になります。


脊柱管狭窄症は早期の対応が何よりも大切です。症状が悪化して日常生活に支障が出てからでは、改善に時間がかかります。「最近、座っていると足のしびれを感じるようになった」「腰の痛みが増している」など、少しでも心当たりがあれば、まずは正しい座り方から始めてみてください。
それでも改善しない場合や、症状が強く出ている場合は、一人で悩まずに、専門知識と豊富な治療実績を持つ当院にご相談ください。あなたの脊柱管狭窄症の根本改善に向けて、全力でサポートいたします

