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「先生、もうゴルフはやめた方がいいですか?」——当院に来られる患者さんから、こんな言葉をよく耳にします。長年の趣味であるゴルフを脊柱管狭窄症によって諦めなければならないのでは、という不安を抱えている方は、本当にたくさんいらっしゃいます。
結論から言わせてください。正しく対処すれば、ゴルフを続けることは十分に可能です。大切なのは「やめるかどうか」ではなく、「どう身体と向き合うか」です。
今回は、柔道整復師として30年以上の臨床経験を持つ私が、脊柱管狭窄症を抱えながらゴルフを楽しむために必要な知識と対策を、できる限り丁寧にお伝えしたいと思います。


「ゴルフを諦めたくない」という気持ちはよくわかります。ゴルフ仲間との時間は何物にも代えがたいですよね。だからこそ、正しい知識と対処法を身につけてほしい——この記事にはそんな思いを込めました
脊柱管狭窄症とゴルフの関係について考えるとき、まず「ゴルフはどんな動きをするスポーツか」を改めて整理することが大切です。ゴルフスイングには、腰を大きく回旋させる動き、バックスイングでの後屈(腰を反らせる動き)、そしてラウンド中の長距離歩行が含まれます。これらはいずれも、脊柱管狭窄症の症状と深く関わっています。
背骨の中には、脳から全身へとつながる神経が通るトンネルがあります。これを「脊柱管」と呼びます。このトンネルが加齢などによって狭くなり、中を通る神経が圧迫されることで、腰や足のしびれ、痛み、歩きづらさなどの症状が現れるのが脊柱管狭窄症です。
特徴的な症状のひとつが「間欠性跛行(かんけつせいはこう)」です。少し歩くと足が痛くなって休まないと歩けなくなる、でも少し休むとまた歩けるようになる——そんな経験をされている方は少なくないはずです。前かがみの姿勢になると楽になることが多いのも、この症状の特徴です。
ゴルフスイングの中で、脊柱管狭窄症の方に特に注意が必要なのがバックスイングからトップにかけての動きです。腰を後ろに反らせる動作(腰椎の伸展)は、脊柱管をさらに狭くするため、神経の圧迫を強める可能性があります。また、腰椎に対する捻り(回旋)の負荷も積み重なると症状を悪化させることがあります。
さらに、18ホールのラウンドでは10キロ以上歩くこともあります。間欠性跛行を持つ方にとって、これはかなりの負担です。ただし、だからといってゴルフを即座にやめる必要があるかというと、そうではありません。ポイントは、身体の状態を正しく把握したうえで、適切な対策を取ることです。
私がこれまで診てきた患者さんの中には、脊柱管狭窄症の診断を受けながらも、適切な対処をすることでゴルフを続けられるようになった方が多くいらっしゃいます。重要なのは、次の3つの視点から総合的にアプローチすることです。
スイングの改善は、ゴルフを続けるうえで最も即効性のある対策です。具体的には、バックスイングでの腰の回旋を腰椎ではなく股関節と胸椎で補うことが重要です。腰を「回す」意識ではなく、股関節から「ターンする」イメージに切り替えることで、腰椎への直接的な負荷をかなり軽減できます。
フォロースルーで腰を大きく反らせる動作も控えましょう。スイング後に身体を前傾気味にキープする意識を持つだけで、腰椎への後屈負荷をかなり和らげることができます。また、クラブを短く持ったり、ハーフスイングを意識したりすることも有効な工夫です。
18ホールを歩くのがきつい方は、まずハーフラウンドから始めることをおすすめします。カートを積極的に使い、歩く距離を意識的に調整することも大切です。歩行中に症状が出始めたら、無理に歩き続けるのではなく、前かがみで少し休む。これだけでも随分と違います。
また、適切なシューズを選ぶことも見落とされがちなポイントです。クッション性が高く、足裏全体で体重を受け止められるシューズは、脊柱管狭窄症の方にとって歩行時の衝撃吸収の面で大きなメリットがあります。
スイングの工夫やラウンドの調整だけでは、本質的な解決にはなりません。症状が繰り返すのは、身体の構造的なアンバランスが解消されていないからです。反り腰、股関節の可動域不足、腹筋の弱さ、足指の機能低下——これらが組み合わさって脊柱管への負担を生み出しています。
当院では、こうした身体の根本的な状態を多角的な検査によって明らかにし、その原因に直接アプローチする施術を行っています。症状を一時的に抑えるのではなく、「なぜその症状が起きているのか」を解き明かすことを最も大切にしています。
ゴルフのラウンド前後のケアも、症状の管理において非常に重要な意味を持ちます。準備なしにいきなりプレーに入ったり、ラウンド後に身体のケアをせずに帰宅したりすることは、翌日以降の症状悪化につながることが少なくありません。
プレー開始前には、最低でも10〜15分かけてウォームアップを行いましょう。ポイントは腰椎を直接動かすのではなく、股関節と胸椎の可動性を引き出すことです。股関節を大きくゆっくり回す運動、胸を開くような胸椎の回旋運動、そして体幹をゆっくり安定させる腹圧のかけ方の確認——これらを組み合わせて行うと効果的です。
急に激しいストレッチをする必要はありません。むしろゆっくりと、身体が「動ける状態」に入るように時間をかけてあげることが大切です。焦りは禁物です。
ラウンド後は、股関節の前面と腸腰筋のストレッチを丁寧に行いましょう。腰を反らせるような動作は避け、仰向けに寝て両膝を胸に引き寄せるポジションで背中を緩めるのがおすすめです。また、入浴で身体を温めて血流を促すことも、翌日の回復を助けます。
翌日に足のしびれが強くなっていたり、歩ける距離が明らかに短くなっていたりする場合は、身体からの「少し休んで」というサインと受け取ってください。無理に次のラウンドを入れず、状態の回復を優先することが長期的なゴルフ継続につながります。
整形外科で「もう手術するしかない」と言われた方から相談を受けることが、当院では珍しくありません。手術を否定するつもりはありませんが、排尿・排便障害などの重篤な神経症状がない場合、保存的な治療で症状が大幅に改善するケースは多くあります。
手術は体への負担が大きく、術後の回復にも時間がかかります。また、術後に腰痛や神経痛が再発してしまうケースもあります。だからこそ、「手術の前にやれることをやり尽くしたか」を一度立ち止まって考えてみてほしいのです。
当院では、これまで手術を勧められた方が保存療法で改善し、ゴルフに復帰されたケースを数多く経験してきました。あなたの身体がどんな状態にあるのか、何が原因で症状が出ているのかをきちんと検査で明らかにすることが、最初の一歩です。
30年の臨床経験を通じて確信していることがあります。脊柱管狭窄症の患者さんの症状を引き起こしている原因は、腰だけにあるのではないということです。全身の筋肉・関節のバランスが崩れた結果として、腰椎に過剰な負担がかかっている——そういう状態であることがほとんどです。
当院の検査で多く見られるのは次のような問題です。
これらの問題が組み合わさって、脊柱管狭窄症の症状として現れています。どの問題がどの程度関与しているかは人によって異なるため、当然、治療のアプローチも人それぞれです。だからこそ当院では、何よりも検査を重視しているのです。
足底重心測定器(ピドスコープ)をはじめとする5種類の検査で、現在の身体の状態を可視化します。姿勢分析・動作分析・整形外科的検査・筋力検査を組み合わせることで、症状の根本にある原因を特定します。検査結果はわかりやすく説明し、治療計画を一緒に確認しながら進めていきます。
「あちこち行ったけど良くならなかった」という方も、諦めないでください。原因がわかれば、改善する道は必ず見えてきます。
当院に来院された方の中には、脊柱管狭窄症による腰や下肢の症状を抱えながら、適切な施術と身体の使い方の改善によって、ゴルフを以前のように楽しめるようになった方が実際にいらっしゃいます。
70代の男性患者さんは、来院当初はゴルフ中に腰の重だるさが強くなり、コルセットなしではプレーできない状態でした。当院での施術と運動療法を継続する中で、身体のバランスが整い、コルセットなしでラウンドできるまでになられました。「また仲間と普通にゴルフができるようになった」とおっしゃっていたときの表情は、今でも忘れられません。
改善の過程で患者さんが口をそろえておっしゃるのは、「身体の使い方が変わった」という感覚です。腰だけに頼っていた動きから、股関節と体幹を上手に使った動きへ——この変化がゴルフのパフォーマンス向上にもつながっているようです。
脊柱管狭窄症の診断を受けたからといって、ゴルフをすぐに手放す必要はありません。大切なのは、自分の身体の状態を正確に把握すること、そして正しい対処法を実践することです。スイングの工夫も、ラウンドの調整も、運動療法も——すべては「あなたの身体がどんな状態か」を知ることから始まります。
ゴルフ仲間との時間、青空の下でクラブを振る瞬間、そのすべてを諦めてほしくないと心から思っています。一人でネットを調べながら不安を抱えているよりも、ぜひ私に相談してください。あなたの身体のことを一緒に考えながら、ゴルフを続けるための道を探していきましょう。どんな些細なことでも、遠慮なくご相談いただければと思います。

