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あなたは今、医師から脊柱管狭窄症の手術を勧められて、本当に手術が必要なのか悩んでいないでしょうか。長年、歩くことが苦しい、足がしびれる、という症状に悩まされていれば、医師の勧めに心が傾くのも当然です。でも、多くの患者さんが同じ状況で判断を迷っています。整形外科医の意見も施設によって異なることもあります。
私は30年以上の臨床経験を通じて、数多くの脊柱管狭窄症でお悩みの患者さんとお会いしてきました。その中で気づいたことがあります。それは、手術という選択肢が唯一の道ではなく、症状の進行度や生活への影響の程度によって、判断基準は大きく変わるということです。


脊柱管狭窄症は確かに時間とともに進行することもありますが、適切な診断と治療計画があれば、手術を避けられるケースも少なくありません。まずは、あなたの現在の状態を正確に把握することが重要です
脊柱管狭窄症で医師が手術を勧める背景には、症状の深刻さと日常生活への影響があります。加齢とともに脊椎周辺の靭帯が厚くなり、椎間板が変性し、脊柱管というトンネルが狭くなる状態が脊柱管狭窄症です。その結果、脊髄や神経が圧迫され、腰痛や足のしびれ、歩行困難といった症状が起こります。


特に間欠性跛行という歩いていると足が痛くなり、少し休むと再び歩けるという症状が強い場合や、日常生活に大きな支障が出ている場合、さらに膀胱直腸障害という排尿や排便の機能に影響が出ている場合は、手術の対象候補になることが多いです。こうした状況では、確かに手術が改善への最短ルートになる可能性もあります。
脊柱管狭窄症の手術にはいくつかのアプローチがあります。どの方法を選ぶかによって、入院期間や回復期間、リスクは大きく異なります。
最初に、現在の医学ではできるだけ体へのダメージを少なくする低侵襲手術が推奨される傾向が強いです。内視鏡を使った椎弓形成術や開窓術は、従来の大きく切り開く手術に比べて、入院期間が短く、回復も早いという利点があります。多くの場合、3日から1週間程度の入院で済みます。
一方、脊椎固定術という、複数の椎骨をボルトで固定する手術もあります。この方法は、不安定性がある場合に選択されることが多いですが、手術時間が長く、入院期間も長くなる傾向があります。また、固定した部分の上下の椎間板に負担がかかりやすくなる可能性も報告されています。
どの手術方法が最適かは、狭窄の程度、位置、そしてあなたの全身の状態によって異なります。ここが非常に重要なポイントです。医師の一度の説明だけで判断するのではなく、複数の検査結果とあなたの生活目標を照らし合わせて、納得できるまで説明を受けることをお勧めします。
一般的に、脊柱管狭窄症の手術の成功率は、70~80%程度と報告されています。つまり、100人が手術を受けたら、70~80人は症状が改善し、20~30人は期待した結果が得られないか、改善が限定的だということです。この数字をどう受け止めるかは、人によって異なるでしょう。
さらに、手術には以下のようなリスクも存在します。神経損傷による新たなしびれ、感染症、血栓症、そして再発です。特に再発は注目に値します。手術後、数年経ってから同じような症状が再び出現することもあります。これは、もともとの原因、つまり脊椎全体の不安定性や姿勢の問題が改善されていないことが関係しています。
ここからは、私の臨床経験を踏まえたお話しです。脊柱管狭窄症と診断されても、すぐに手術が必要なわけではないケースが数多くあります。特に初期段階から中期段階の患者さんの場合、適切な保存療法によって症状を大きく改善できることがあります。
保存療法とは、薬物療法、物理療法、そして最も重要な運動療法を組み合わせた治療法です。病院では一般的に、痛み止めの処方、温熱療法、電気治療、そして簡単なストレッチが行われます。しかし、多くの場合、これらは脊柱管狭窄症の根本的な原因には対処していません。
脊柱管狭窄症が発症する背景には、長年の姿勢の悪さ、脊椎周辺の筋肉のアンバランス、股関節や膝関節の可動域制限、そして歩行パターンの異常があります。これらの要因が複雑に絡み合って、脊柱管が狭くなる環境を作ってしまうのです。
ここで私が強調したいのは、検査と原因特定の重要性です。あなたの脊柱管狭窄症は、どのような日常動作で悪化しやすいのか。足のしびれはどの姿勢で強くなるのか。股関節の柔軟性はどの程度か。歩く時の足の着地はどうなっているのか。これらを丁寧に調べることで、初めて適切な対策が見えてくるのです。
では、具体的にどんな時に手術を検討すべきなのでしょうか。医学的には、以下のような基準があります。
これらの基準に複数当てはまる場合、手術の検討も視野に入れるべきでしょう。しかし同時に重要なのは、なぜこの状態に至ったのかという背景を理解することです。手術によって狭窄を解除しても、その背景にある姿勢や生活習慣の問題が改善されなければ、再発のリスクが高まるのです。
手術を受けることに決めた場合、重要なのは手術後の過ごし方です。多くの患者さんが、手術さえすれば完全に元通りになると考えがちですが、実はそうではありません。手術後1~2週間は厳格な安静が必要です。その後、徐々に動きを増やしていく段階が始まります。
この時期に、理学療法士の指導の下で筋力トレーニングを開始することが非常に重要です。特に腹部深層筋と脊椎安定化筋の回復が焦点になります。多くの病院では、術後4~6週間程度で簡単なリハビリテーションが行われますが、本当の意味での機能回復には3~6ヶ月が必要な場合も少なくありません。
この時期に正しいリハビリテーションを受けるかどうかで、長期的な結果は大きく変わります。手術による神経圧迫の解除と、その後の適切なリハビリテーションが組み合わさった時初めて、手術の真の効果が実現するのです。
一方、保存療法で改善するケースとはどのようなものか、実例を通じて説明します。典型的なパターンは、初期から中期の脊柱管狭窄症で、症状が5年程度の患者さんです。このような患者さんの場合、以下のようなステップで改善することがあります。
まずは、どの動きが症状を強くするのかを把握します。前かがみの動作で楽になるが立ち続けると痛む場合と、立ち続けてから歩くと痛む場合では、対応が異なります。その上で、日常生活での動作指導を行います。物を持ち上げる時の工夫、椅子からの立ち上がり方、寝る時の姿勢など、実に細かい部分が改善に影響します。
保存療法の鍵は、適切に設計された運動療法です。いきなり激しい運動は禁物ですが、まったく動かないのも筋力低下を招きます。現在の症状を悪化させない範囲で、股関節の柔軟性、腹部のコア筋の活性化、歩行パターンの改善を段階的に進めます。多くの患者さんは、このプロセスで3~6ヶ月で有意な改善を実感します。
最終的には、患者さん自身が日常生活で正しい動きを実践し、定期的なセルフケアを継続することが重要です。週に数回の体操やストレッチが習慣になれば、症状の再発を大きく減らせます。
脊柱管狭窄症で手術を勧められた時は、以下のステップで判断することをお勧めします。まず、現在の症状が本当に手術の対象になるのか、別の医師の意見も聞いてみてください。同じ画像検査でも、医師によって解釈や推奨は異なることがあります。次に、保存療法でどこまで改善する可能性があるのか、専門的な評価を受けてみてください。
そして最も重要なのは、手術にせよ保存療法にせよ、その後のリハビリテーションと生活改善まで含めた長期的な計画を立てることです。手術は確かに神経圧迫を解除する有効な手段ですが、それ一つで完結するわけではありません。
脊柱管狭窄症で悩まれている皆さまへ。この症状は、確かに大変なものです。長年、足の痛みやしびれと付き合い、やりたいことができず、不安な日々を過ごされている気持ちはよく分かります。しかし、だからこそ、一度の医師の意見だけで判断してほしくないのです。


手術が必要なケースもあれば、適切な保存療法で改善するケースもあります。最も大切なのは、あなた自身が現在の状態を正確に理解し、複数の選択肢を冷静に検討することです。私の30年の臨床経験から言えるのは、こうした丁寧なプロセスを踏んだ患者さんほど、最終的には満足した結果を得ているということです。
もし脊柱管狭窄症についてお悩みでしたら、一人で判断せず、いつでもお気軽にご相談ください。あなたの状態を丁寧に評価し、手術を含めた複数の治療の可能性について、わかりやすく説明させていただきます。

